昔は、自宅で亡くなることが殆どでした。
そして、納棺・通夜から葬儀、その後の儀式の段取りを、残された家族を始め、親族、近所の方々の手によって行いました。
そのため、死を悼む人々が特別な心理状況であるや、故人に対し敬意を払うべきことを自然と身に着けることができました。
しかし、現代では、亡くなられる方のおよそ8割が、病院で息を引き取ります。
また、小規模になった家族構成や、人間関係の希薄さに伴い、自分達の手による通夜・葬儀が行われなくなってきました。
それに伴い、遺族がどのような心理状況で心のケアを必要しているのかを配慮してあげることが難しくなりつつあります。
しかし、悲しみを癒すための作業(グリーフワーク)は、必ず遺族にとって必要です。
悲しみのプロセスには、最初に起こるショック・麻痺状態があります。
大切な人の死が信じられないという心理状況から、頭がボーとしてしまい外部からの働きかけに対応できないなどの症状が出ます。
しかし、死という現実は、納棺・通夜・葬儀などの儀式を経ながら時間をかけて受け入れていくものです。
悲しみの中でも、この一連の儀式における打ち合わせを、葬儀屋と行うことは、非常に重要なグリーフワークとなります。
人は、失意の中で、儀式の打ち合わせなど重要なことを行うと、心のコントロールの回復が早まると言われています。
加えて、葬儀屋のスタッフは、職業柄、死に直面することが多いため、ご遺族が安心した気持ちでいられるように、心を汲むことが可能です。
葬儀屋は、単に終焉の儀式のお手伝いをするだけではなく、ご遺族の心の支えとなるべき役目も担っていると言えます。